【WRS特集】Vol.7:シミュレーション災害チャレンジ- 安全な仮想プラントでロボット制御技術を磨く -

この記事では、AIロボットのFR-1が大学生のレイさんに、WRS2025過酷環境F-REIチャレンジの競技の一つ「シミュレーション災害チャレンジ」について、その目的と意義、ルールについて解説しています。

 

FR-1:レイさん、こんにちは。本日はWorld Robot Summit 2025(WRS2025)の競技の一つである「シミュレーション災害チャレンジ」について、その目的、意義、そしてルールについて詳しくご説明いたします。ご不明な点がございましたら、いつでもお尋ねください。

レイ:こんにちは!シミュレーション災害チャレンジ、シミュレーションと災害ってあまり結びつかないですが、どんな競技なんですか?ロボットがシミュレーション上の災害現場を動くんですよね?

FR-1:はい、その通りです。このチャレンジは、コンピュータを使用した仮想環境で行われる競技です。実際のプラント災害では、安全上の理由や、競技ごとにフィールドをリセットする時間の長さなどから、実施が困難なタスクが多くあります。そこで、シミュレーションを用いることで、実機では再現が難しい、より過酷な環境を積極的に取り入れ、災害後のプラントや構造物内部での災害対応能力を評価することを主眼としています。

レイ:なるほど、バーチャルだからこそできることがあるんですね。ロボットが壊れる心配もない、と?

FR-1:その通りです。シミュレーション競技では、ロボットやドローンが競技中に壊れることがありません。この競技の目的は、単に技術を競うだけでなく、災害対応ロボットシミュレーターの性能評価とその標準化を検討することにもあります。 また、この競技は、アジャイルなロボット開発におけるロボット評価、ロボットを用いたSTEM教育、ロボットの工場内運用評価、ロボットを用いた災害対応戦略、そしてロボットオペレーターの訓練など、幅広い分野での活用効果が期待されています。シミュレーション環境であれば、陸海空ロボットの連携を評価する際に、評価条件に合致する場所を探す必要もありません。 さらに、福島復興の観点から、競技フィールドには原子炉圧力容器が設置され、そこへ至るダクトをドローンで移動し、容器内へ侵入して内部を確認するミッションが設定されています。これにより、過酷環境下での情報収集や緊急対応を行う技術開発を促進しています。

レイ:すごい、教育にも役立つんですね!具体的にはどんなルールがあるんですか?私のノートパソコンでも参加できるのかな?

FR-1:競技参加には、大会で使用されるPCと同等の仕様、具体的にはCPU: Core i9-13980HX、GPU: GeForce RTX 4080、メモリ: 32GB、SSD: 1TBクラスのPCと、ROS2通信が可能な環境が必要です。ソフトウェアはChoreonoidの最新バージョンと、有償物理演算パッケージであるArgorix社製のAGX Dynamics Choreonoid Plug inが必要で、Plug in用のUSBドングルは競技参加決定後に無償で貸与されます。競技に関する情報は、GitHubで提供されます。

レイ:結構ハイスペックですね。チームは何人くらいで参加するんですか?

FR-1: チーム構成についてですが、パドックに入れる人数は最大4名、実際に競技を行う競技者は2名と定められています。競技中のメンバー交代はできませんが、ミッションごとにチーム内の役割を交代することは可能です。

レイ:なるほど。タスクの種類はどんなものがあるんですか?

FR-1:競技タスクは大きく分けて以下の4つのカテゴリがあります。

● 移動【M】(基礎点:10点): ロボットがA地点からB地点まで、経路を維持しながら移動するタスクです。傾斜面、キャットウォーク、ダクト内、階段といった多様な地形での移動が求められます。

● 確認【R】(基礎点:10点): ターゲットの認識、メータの数値読み取り、水位確認など、必要な情報を正確に取得し報告するタスクです。ターゲットはQRコードとパイプで構成され、QRコードはバージョン1、誤り訂正能力レベルQ(25%)が使用されます。

● 操作【O】(基礎点:10点): スイッチやバルブの操作、ドアの開閉、棒の引き抜き、障害物の移動など、指定された操作を完了するタスクです。例えば、消火栓のバルブを開けるには5Nm、放水レバーを回転させるには2Nmのトルクが必要とされます。

● 作業【W】(基礎点:10点): 消火作業など、指定された手順に従って目的を達成する一連の動作を行うタスクです。消火作業には、消火設備の扉開け、ホース引き出し、ノズル接続、消火栓バルブ開け、火元へ移動・放水といった手順が含まれます。

各タスクの得点は、「競技カテゴリの基礎点」に「種類の係数」と「細目の係数」を乗じて算出されます。

レイ:実際にどんなフィールドで競技をするんですか?

FR-1:競技フィールドは、災害後のプラントを模した環境で、複数のエリアに分割して構築されます。このフィールドは、プラント配管、バルブ、メータなどのタスク要素部品を配置した、一般的な工場プラントを再現しています。 環境条件として、閉所、狭隘空間、明暗所、無線通信領域、火災、煙が設定され、照明の強度や無線通信の帯域と遅延は競技設計に応じて制御可能です。暗所、風、煙、水といった過酷な環境条件がタスクの実施を困難にさせます。1フロアに4つの競技エリアが準備され、セッションごとにエリアの状況が変化する中で競技が行われます。

レイ:時間制限とか、ロボットが動けなくなっちゃったらどうなるんですか?

FR-1:競技時間は実時間で管理され、1ミッションあたり予選では15、準決勝・決勝では15分から25分が設定されています。もしロボットが動けなくなった場合、競技時間内であれば何度でも再試行(リトライ)が可能ですが、そのミッションで得た得点はリセットされて0点に戻り、競技時間も進行し続けます。 また、各ミッションには「スタート位置」と「ゴール位置」が指定されており、競技終了時にすべてのロボットがこれらの指定位置に移動を完了している必要があります。もし完了できていない場合、ロボットは「ロスト」とみなされ、そのミッションの得点に0.5が乗じられる減点となりますが、予選ではロストしたロボットを次のミッションで使用することは可能です。

レイ:得点はどうやって決まるんですか?オリジナルロボットを使うと有利になったりしますか?

FR-1:はい、その通りです。WRSで用意したプラットフォームロボットだけでなく、自作のオリジナルロボットでの参加も可能です。オリジナルロボットは事前に検査が必要ですが、それで得点したタスクには「ロボットによる係数」(1.01.5が乗じられ、高い得点が得られます。 さらに、以下の係数も得点に影響します。

● 環境条件による係数(1.03.0: 暗所、風、煙、水といった過酷な環境下でのタスク達成に加点されます。

● 自律動作による係数(1.33.0: ミッション内のすべてのタスクを自律動作で完了した場合に、ミッション全体の得点に乗じられます。

● 環境地図による係数(1.01.2: 競技フィールドの環境情報(地図、温度など)を提出した場合に、ミッション全体の得点に乗じられます。

● 時間による加点: 規定時間よりも早く競技を終え、かつ全てのロボットがスタートまたはゴール位置にいる場合、残り時間1秒ごとに2/60点が加算されます。

減点としては、先ほど説明したロストの他に、特定の「競技タスクの減点」や、競技委員が不適切と判断した場合の「競技委員による減点」が適用される場合があります。最終的な順位は、予選、準決勝、決勝の各ミッションで獲得した合計得点によって決定されます。

レイ:すごく詳細に評価されるんですね!シミュレーションならではの挑戦的な要素がたくさん詰まっているのがよく分かりました。ありがとうございます、FR-1

FR-1:どういたしまして、レイさん。このシミュレーション災害チャレンジは、過酷環境における災害対応ロボット技術の発展と、未来の社会実装に貢献する重要な競技です。ご興味を持っていただけて光栄です。

 

                                                              写真1:プレ大会(2024年)におけるSTM競技の実際の様子

                                                                              写真2:プレ大会(2024年)におけるSTM競技のライブ中継の様子