【WRS特集】Vol.2:過酷環境ドローンチャレンジ(HEDC)- 世界一過酷なドローンレース -

この記事では、AIロボットのFR-1が大学生のレイさんに、WRS2025過酷環境F-REIチャレンジの競技の一つ「過酷環境ドローンチャレンジ(HEDC)」について、その目的と意義、ルールについて解説しています。

 

FR-1: レイさん、こんにちは!今日はWRS2025の魅力的な競技の一つ、 「過酷環境ドローンチャレンジ」、
  略して HEDCについてお話ししましょう。 ドローンと聞くと、ちょっとワクワクしませんか?
レイ : FR-1先生、こんにちは!ドローン、すごく興味あります!HEDCっていうのは、どんな競技なんですか?

1. HEDCの目的と意義:なぜこのチャレンジが行われるのか
FR-1: HEDCは、ただのドローンレースとは一味違います。まずはその目的と意義から説明しましょう。
FR-1: F-REI(福島国際研究教育機構)は、東日本大震災を経験した福島で、廃炉作業や自然災害、さらには森林のような「過酷環境」で活躍する
             ロボットやドローンの研究開発
を進めているんですよ。

レイ : なるほど、福島での経験がきっかけになっているんですね。過酷環境って、具体的にはどんな場所を指すんですか?
FR-1: F-REIでは、「過酷環境(極限環境)」を「温度、圧力、放射線、重力、磁力、pHなどが、一般的な生物(人間を含む)が生息できる条件か
             ら大きく逸脱した環境」と定義しています。人間が行くのが難しい場所で、ロボットが代わりに働くことを目指しているんです。

FR-1: 特にHEDCでは、次の3つのような具体的な「過酷環境」において、ドローンの技術を競います。予め、ドローンが飛びやすいような環境は用
             意していません。


●    悪天候(風、雨、霧など)でも決められた時間内にミッション遂行
●    通信が途絶したり、遅延したりする環境
●    障害物が多い環境(送電線、樹木、鉄塔など)

レイ : うわぁ、どれも難しそうです。そんな中でドローンを飛ばすんですね。
FR-1: その通りです。HEDCの根底にあるのは、大規模災害が発生して道路が寸断され、地上からのアプローチが困難な状況で、いかに空からのア
             プローチで人命を救うか
という命題です。だから、単に速く飛ぶだけでなく、実際の災害現場で本当に役立つイノベーションを提案すること
             が重視されるんですよ。

レイ: つまり、現場で頼れるドローンかどうかを試すんですね。

2. 3つのミッションの競技ルール:ドローンで救う命
FR-1: HEDCには、災害対応情報収集と物資搬送の長距離飛行をテーマにした、3つの主要なミッションが設定されています。それぞれのミッション
             の目的とルールを見ていきましょう。

FR-1: 競技の舞台は福島ロボットテストフィールド(RTF)とその周辺、特に南相馬市の小高地区です。災害対策本部はRTF浪江滑走路に設置さ
             れ、そこからドローンが出動します。

2.1. ミッション1:被災状況調査と救援車両ルート探索
FR-1: 最初のミッションは、大規模災害で状況が不明な中、被災状況を全体的に調査し、寸断された道路の代わりに救援車両が通れるルートを見つ
             ける
ことです。

レイ : いくつかある道の中から、どこなら通れるか調べるんですね!
FR-1: そうです。

●    目的とタスク: 指定された福島県浜通りの小高地区エリアを空から調査し、障害物の正確な位置と種類を特定します。そして、救援車両が通行
                                   可能なルートを策定
し、鮮明な映像とともに迅速に災害対策本部へ報告します。オルソ画像(真上から見たような歪みのない写
                                   真)で示すのが最も良いとされています。
●    飛行距離: RTF浪江滑走路から小高地区までの往復で、約20kmの長距離飛行が想定されています。
●    高得点戦略
複数機の活用: 固定翼、回転翼、VTOL(垂直離着陸機)など多様なドローンを複数機組み合わせて使い、偵察効率を上げることが推奨さ
                                            れています。
自律・群制御: 複数のドローンによる編隊飛行やスウォーム飛行(群れをなして飛ぶ)といった自律制御、群制御、協調制御は高く評価さ
                                            れます。
データ活用: 災害対策本部への報告は、オルソ画像や3Dマップなどの広域電子データで行う必要があり、その作成速度も重要です。飛行
                                         中にデータをクラウドに伝送して処理を高速化する技術も高く評価されます。

2.2. ミッション2:要救助者探索、物資要求判読、物資搬送
FR-1: 次は、被災者への直接的な支援です。空から被災者を見つけ、彼らが地上に書いた文字からどんな救援物資を求めているかを判読し、指定さ
             れた場所に正確に物資を届ける
ミッションです。

レイ: 被災者のSOSに応えるんですね!文字を認識するのも大変そうです。
FR-1: その通り、非常に高度な技術が求められます。

●    目的とタスク: 小高地区の複数箇所にいる要救助者を発見し、その正確な位置と状態を報告します。その後、被災者の近くまで飛行し、地上に
                                   描かれた文字を認識して、要求する救援物資の種類を理解
します。最後に、別の物資搬送ドローンを使って、安全に、かつ物資
                                   を破損させずに指定された場所に物資を届けます
。救援物資は約2kg程度のものを想定しています。
●    飛行距離: ミッション1と同様、往復で約20kmの長距離飛行です。
●    高得点戦略
AIによる判読・認識: 地上の文字認識や、物資搬送地点の自動認識にAI技術を用いると高く評価されます。人間による判断も許容されます
                                                        が、減点対象になる場合があります。
高高度からの判読: 高い高度から文字を判読できれば、それも評価の対象です。
迅速で正確な搬送: 物資が届くまでの時間と、指定された場所への正確な着陸または投下が重要です。
自律的な物資切り離し: ドローンからの物資の切り離しが、オペレーションセンターからの遠隔操作ではなく、自律制御やAI技術を活用し
                                                            た自律型
であれば高く評価されます。

2.3. ミッション3:遠隔地建屋内の被災状況調査
FR-1: 最後のミッションは、倒壊を免れた建物の中にいる被災者の状況を調査し、報告するという、より精密な作業が求められます。
レイ: 建物の中に入るんですか?大型ドローンだと難しそうですね。
FR-1: まさにその課題があります。

●    目的とタスク: RTF本拠点の市街地フィールドにある建物内に、親機となる大型ドローンで小型UAV(子ドローン)や小型UGV(地上ロボ
                                    ット)を搬送します。親機は着陸またはホバリングしながら子機を切り離し、子機が適切な侵入経路を認識して建物内に入り、
                                    被災者の人数、位置、状況を調査
します。調査結果は3Dマップを作成して要救助者の位置をマークし、災害対策本部へ報告し
                                    ます。
●    飛行距離: RTF浪江滑走路からRTF本拠点までの往復で、約30kmと最も長い長距離飛行になります。
●    高得点戦略
親子機連携と自律性: 大型ドローンで子機を搬送し、子機が自律型で建屋内にアプローチし情報収集すると高く評価されます。子機の分離
                                                        も自律型が有利です。
UGVとの連携: 小型UAVだけでなく、小型UGVも活用し、それらが連携して調査を行えば高く評価されます。
精密な情報収集: AI技術による被災者探索、3Dマップ作成、生存者の声や体温の認識なども高く評価されます。
飛行ルート: ミッション3の進入路には高圧電線や鉄塔が存在します。鉄塔上空を通過する際には、頂上から30m以上の離隔距離(できれ
                                        ば100m以上の高度)を確保する必要があります。
ペナルティ: RTF市街地フィールド近辺からミッション3を開始することも許容されますが、大きな減点となります。

3. 高得点のための戦略:勝利への道筋
FR-1: レイさん、各ミッションの概要とルールは理解できましたか?HEDCで高得点を獲得するには、いくつかの重要な戦略があります。戦略の軸
             は自律運用と通信の安定です。

レイ: はい、だんだん分かってきました!どれも高度な技術が求められそうですね。どうすれば高得点を取れるんでしょうか?
FR-1: では、高得点を得るためのポイントをまとめましょう。HEDCの満点は400点です。

●    ミッション達成度(350点): ミッション1(70点)、ミッション2(70点)、ミッション3(210点)の合計で350点が配点されており、それぞ
                                                             れのミッションを正確かつ迅速に遂行
することが最も重要です。特に難易度の高いミッション3に大きな配点が
                                                              されています。
●    独自の電波中継システムの構築(50点):福島浜通り地域は電波状況が悪いため、ミッションの確実な達成には独自の電波中継ドローンの運用
                                                                                 が重要です。LTE通信の利用は可能ですが、評価が著しく下がるため、できる限り独自の電波中継シス
                                                                                 テムを構築しましょう。
●    複数機の自律・協調制御
○    ミッション1や2では、情報収集用ドローンと物資搬送用ドローンなど複数機を効率的に利用することが推奨されています。
○    これらの機体による自律制御、群制御、協調制御は高く評価されます。
●    AIと高度な情報処理
○    被災状況や要救助者の発見、物資要求の判読、着陸・投下地点の自動認識など、AI技術による自動化は高得点に直結します。
○    オルソ画像や3Dマップの迅速な生成、クラウドへのデータ伝送による高速処理も評価対象です。
●    過酷環境への対応と機体の堅牢性
○    競技は雨天決行であり、常に風速10m程度の風が吹く環境のため、全ての機体に防水対策が必須です。
○    海上飛行に備え、浮き具(フロート)の装着も義務付けられています。
○    墜落時の位置把握のため、位置通報システムの搭載が義務付けられ、非常用パラシュートの搭載も推奨されます。
●    法令遵守と安全性
○    日本の航空法および電波法への対応は必須です。特に、無人航空機の機体登録は事前にチームで行う必要があります。
○    人の立ち入りが禁止された区域を飛行しない「カテゴリーⅡ」に該当するため、第三者の上空を飛行しないようジオフェンス等で飛行禁
                   止ゾーンを設定
することが求められます。
○    有人機からの視認性を高めるため、航空法に準拠した灯火を装備し、競技中は点灯させる必要があります。
●    イノベーションと準備
○    競技に勝つことだけでなく、災害救助の現場で役立つイノベーションを提案する視点が重要です。
○    チーム構成、産学連携、災害発生時の初動体制へのアプローチ、機材の最適化なども総合的に評価されます。

レイ: 自律制御とかAIがすごく重要なんですね!あと、安全対策もしっかりしないといけないと。
FR-1: はい、HEDCは単なる技術力だけでなく、現実の災害対応における総合的な課題解決能力が問われる、非常に挑戦的な競技です。これらの点
             を意識してチームを編成し、準備を進めることが、高得点への鍵となるでしょう。観客として見るなら、こういう点に注目すると面白いよ。


ミッション1:通行可能ルートをどれだけ正確に判定できるか
ミッション2:適切な救援物資を安定して正しい場所に届けられるか
ミッション3:屋内での探索精度や親機と子機の連携
共通:自律運用の完成度と通信の安定性

レイ: 浪江町から南相馬市の沿岸部のとても広い範囲で競技が行われるけど、どこに行ったら見学できるの?
FR-1: 南相馬市の福島ロボットテストフィールド(RTF)の会場でライブ中継が見られます。専門家による分かりやすい実況解説付きです。なお、
             ライブ中継はYouTubeで配信されるからどこにいても見られるでしょう。また、浪江町の秋桜アリーナには競技チームのパドック(整備場)
             が置かれ、ここでは競技前後の準備状況や実際の機材を見られます。

レイ: ライブ中継で専門家の実況解説付きで競技を観戦しつつ、浪江町のパドックでは最先端のドローンやチームの舞台裏も見られるなんて、すご
             く楽しみ!

写真左.ドローンは、海上からRTF市街地フィールドへ送電鉄塔を越えて侵入する
写真右.様々な建物、信号、配電線などの障害物を避け、ビル(右側)内を小型ドローンやロボットで探索する

写真左.HEDCにおけるドローンの離発着地点はRTF浪江滑走路。ここから最長13km離れた目的地へドローンが出発する
写真右.RTF浪江滑走路には災害対策本部が置かれ、ミッション遂行のオペレーションを行う





上の画像





中の画像





下の画像
🐇ウソップ物語①:ウサギとカメのHEDCレース🐢
兎 よぉ、カメどん。お前もHEDCレースに出るんだってな。
亀 やぁ、ウサ公。この間のレースのリベンジかい? 
兎 あんな失敗はしないさ。レース中に寝るなんて、もう二度としない。
亀 そもそも寝てる暇なんて無いよ。
        1時間以内に3つのミッションをこなさなきゃならないんだから。

兎 俺の長い耳で空を高速でひとっ飛びすれば、HEDCなんて楽勝だ。
亀 ルールブックちゃんと読んだ? ただのスピードレースじゃないよ。
兎 分かってるさ。猛獣を見つけるこの目と耳があれば、
        地上のターゲットなんて楽勝で発見できる。
亀 なるほど、赤い目は伊達じゃないわけだ。
兎 そういうこと。身体能力じゃ俺に勝てないだろ、カメどん。
亀 いや、勝てるさ。
兎 ん!?
亀 一万年生きてるからね。知恵は持ってるよ。
兎 なるほど、データ処理が早いってことか。
亀 それにもう一つ。親亀の背中に子亀を乗せて~って歌、知ってるだろ?
兎 !!
亀 ミッション3は長距離で、しかも狭い場所の探索も必要なんだ。
だから僕は子ガメを連れて挑む。チームワークで勝つつもりさ。

兎 いい作戦だな。じゃあ俺はミッション1と2に全力をかけるぜ。
亀 健闘を祈るよ、ウサ公。
兎 健闘を祈るぜ、カメどん。

(終)