F-REIの委託研究に携わる福島医大院生が放射線領域の学会で受賞
令和7年4月、福島県立医科大学の大学院生和知 海斗さん、秋谷 直慶さんが、放射線領域において世界最大級の学術集会(第81回日本放射線技術学会総会学術大会)で表彰されました。二人は現在、ともに福島県立医大大学院の三輪研究室に所属し、核医学※治療に関する研究に取り組んでいます。保健科学部時代の卒業研究が評価され、今回の受賞に至りました。
和知さん、秋谷さんは、F-REIの委託研究「RIで標識した診断・治療薬に関する研究開発」に研究補助メンバーとして参画。この委託研究では、がんの診断・治療に用いる画期的な放射性医薬品の開発を目指すとともに、F-REIの将来を担う研究人材の育成を目的としています。F-REIの委託研究への参画が志ある二人の挑戦となり、それが受賞につながったとしたら、こんなに喜ばしいことはありません。
今回、受賞した二人が所属する三輪研究室を訪問し、お話を伺いました。
※放射性同位体元素(RI:ラジオアイソトープ)を利用する医学のこと。病気の診断と治療両方ある。
(インタビューに答える秋谷さん(左)と和知さん)
福島を学びの拠点に、核医学を深める
和知さん、秋谷さんはいずれも福島県出身。福島で学び、将来は医療分野で地元に貢献したいという強い思いを胸に、日々、研究に取り組んでいます。
所属する三輪研究室では、核医学分野における基礎研究から臨床応用まで幅広いテーマが扱われ、研究者としての視野と医療従事者としての技術の幅を広げることができる環境が整っています。三輪教授は「後輩の面倒見もよく、研究室全体を支える存在」と、二人を高く評価しています。
(三輪研究室での活動風景(提供:県立医大))
学びの広がりと実践の場
大学院での研究に加えて、国内外の学会に積極的に参加して発表もしていると聞き、さぞかし多忙な毎日で大変だろうと思いきや、楽しくて仕方がないと、笑顔を見せてくれた二人。
2024年3月には、ドイツやポーランドを訪れ、核医学治療に関する現場の視察も経験。さらに今秋には、スペイン・バルセロナでの国際学会での発表なども控えているそうです。
「F-REIの委託研究に参画することで、学会参加や海外視察の機会もいただいた。挑戦の幅が広がり、成果にも繋がった」と語る和知さんと秋谷さん。研究を通じて多くの人と出会い、視野が広がったことも、大きな収穫だったといいます。三輪教授も「今後、F-REIのような外部機関との連携は、若手育成の大きな後押しになると考えている」と話してくれました。
夢は、福島を拠点に世界で活躍する研究者
将来は博士課程へ進学し、核医学分野で国際的に活躍できる研究者を目指したいと、目を輝かせていた二人。和知さんは「教員として後進を育てる道も視野に入れている」、秋谷さんは「地元・福島に貢献できる研究者になりたい」と、夢を語ってくれました。
三輪研究室は、研究だけでなく、後輩の指導や日々のディスカッションも活発に行われ、院生同士のつながりが深い、とのこと。温かい雰囲気の中、充実した日々を送っている様子が二人からも伝わってきました。そして、二人は福島を拠点にして、世界へとつながる道を着実に拓こうとしている。とても頼もしく感じました。
F-REIが目指す未来──若者が夢を追える環境を
今回の取材を通して、お二人の研究に向けたひたむきな姿勢、そして地元・福島への強い思いに、心を打たれました。
F-REIでは、大学院生や地域の未来を担う若者に対する人材育成も進め、「研究者になりたい」「福島に貢献したい」という志の高い若者たちの夢を、これからも全力で応援していきます。
今回取材にご協力いただいた和知さん、秋谷さん、そして三輪教授、本当にありがとうございました。
お二人のこれからの活躍に、どうぞご注目ください。
(左から、秋谷さん、和知さん、三輪教授)
<受賞研究概要>
●和知 海斗さん: 「学生最優秀賞」
タウPET画像におけるBraak分類とCenTauR・STOC定量評価法の関係
●秋谷 直慶さん:「学生優秀賞」
真の吸収線量に基づくMonte Carlo 177Lu-dosimetryの精度検証
<和知さん、秋谷さんの研究を詳しく知りたい方はこちら>
●和知さんの研究テーマについて
一つ目は、アルツハイマー型認知症におけるアミロイドPETおよびタウPET画像の定量評価に関する研究です。アルツハイマー型認知症では、記憶障害などの症状が現れる前から、脳内でアミロイドβやタウといった異常蛋白の蓄積が進行していることが知られています。PET検査は、これらの異常蛋白の沈着を可視化できる手法であり、認知症の進行を遅らせる疾患修飾薬(DMT)の登場も相まって、病態把握に不可欠な検査となっています。本研究では、従来は視覚的に評価されてきたこれらの画像を、定量値として算出・解析することで、客観的かつ再現性のある評価法を確立し、病態のより正確な把握を目指しています。
もう一つは、核医学治療におけるLu-177やAt-211、Ac-255などのα線核種やβ線核種のトレーサビリティに関する研究です。トレーサビリティとは自施設の測定精度を国家基準の測定精度に結び付けることです。国家基準である産業技術総合研究所や日本アイソトープ協会との共同研究で、核医学治療核種の放射能絶対値の測定方法を開発しています。正確な放射能を測ることで、核医学治療の個別線量評価の精度向上にもつながります。
●秋谷さんの研究テーマについて
現在、核医学治療における個別線量評価法の開発に取り組んでいます。個別線量評価法とは、核医学治療薬剤を投与した後、その薬剤の集積量である吸収線量を算出することで患者ごとに最適な核医学治療を実施するために必要なものです。ただし、個別線量評価法では複数の変動因子が存在し、最終的な吸収線量に差が生じる可能性があります。したがって、個別線量評価法の高度化や標準化を目指し、各変動因子を一つひとつ明らかにすることで、ばらつきのない線量評価の実現を目指しています。精度が高く標準的な個別線量評価法が確立できれば、核医学治療の創薬にも結びつくと考えています。
[参考リンク]
※本記事は、インタビュー当時の内容をもとに構成しています。
インタビュー・執筆:足立、松葉(F-REI 広報担当)