ICRU(国際放射線単位測定委員会)国際シンポジウム
ICRU国際シンポジウムが以下のとおり開催されました。
| 日時 | 2023年4月19日(水)13:00~17:40 |
|---|---|
| 場所 | いわきワシントンホテル(アゼリアB・C)(福島県いわき市) ZOOMよるオンライン配信(日英) |
| 参加者 | 現地参加60名、オンライン参加116名 |
| 議題 | 福島復興と放射線計測 |
| 主催 | 福島国際研究教育機構(F-REI)、産業技術総合研究所(AIST) 計量標準総合センター(NMIJ)、国際放射線単位測定委員会(ICRU) |
| 協賛 | (株)千代田テクノル、長瀬ランダウア(株)、日本アイソトープ協会、 日本原子力研究開発機構、(一社)日本電気計測器工業会、 日本レイテック(株)、(株)応用技研 |
| 後援 | 復興庁、経済産業省 |
ICRU国際シンポジウム開催の趣旨は次のとおり。東日本大震災から12年が経ち、一部地域で避難指示解除がなされ、福島の復興が進んできた。その一方で、福島第一原子力発電所の廃炉はいまだその途上にある。福島の復興に際し、ICRUを日本に招致することができた。
この機会に、福島の復興に貢献してきた放射線計測について議論するとともに、ICRU委員と国内の専門家が一堂に会し、意見交換の場を持つ、本シンポジウムを企画した。本シンポジウムが、福島の復興を内外にアピールする機会になることを期待している。
ICRU国際シンポジウムは、現地参加に加えオンラインで配信され、現地に60名、オンラインに116名の総勢176名が参加した。その所属内訳は表1のとおり。研究機関、企業、官公庁、海外、大学から幅広く放射線に関わる方々のご参加を頂いた。
表1 参加者の所属機関
| 所属 | 参加人数 |
|---|---|
| 研究機関 | 59 |
| 企業 | 51 |
| 官公庁 | 29 |
| 海外 | 18 |
| 大学 | 12 |
| その他 | 7 |
1. オープニングセッション
オープニングセッションでは、齋藤則生 ICRU委員&AIST計量標準総合センター招聘研究員よりICRU国際シンポジウム開催趣旨の説明が行われた後、Vincent Grégoire ICRU委員長による開会挨拶により本シンポジウムが開始された。続いて、内田広之いわき市長および五月女有良福島県企画調整部長から祝辞を頂き、共催団体から臼田孝AIST計量標準総合センター長による挨拶がなされた。
最後に主催者を代表して山崎光悦F-REI理事長から挨拶とF-REIの事業紹介が行われた。
祝辞および挨拶の概要は以下のとおり。
Dr.Vincent Grégoire:ICRU委員長

ICRUは1925年に設立されて以来、非軍事的な放射線利用についての提言を行ってきた。そして特に、放射線防護や炭素線および陽子線を使った治療に取り組んでいる。本シンポジウムにおいて日本の専門家とICRUとの協力が深まることを願い、F-REIと様々な課題について協力が可能であると感じ、本シンポジウムで良い議論が総合討論の場で行われることと確信している、と述べた。
内田広之氏:いわき市長

いわき市は福島第一原子力発電所から30km圏に位置し東日本大震災の際に大きな影響を受けた。特に、放射線に対する知識が十分でなかったために、様々な分野で風評被害がおき、いまだに継続している。正しい知識と正しい情報を共有していくことが風評の払拭につながる。本シンポジウムを通して、様々な知識の共有が進むことが、浜通り地方全体の復興の加速につながる、と述べた。
五月女有良氏:福島県企画調整部長

東日本大震災と原発事故から12年が経過するなか、特定復興再生拠点区域解除が進むなど、本県の復興は着実に前進している。一方で、今もなお多くの方々が避難生活を続けておられることなど、本県は多くの困難な課題を抱えている。本シンポジウムを通じて、福島の復興・再生に資する議論が深まるとともに、関係者の皆様方の研究活動等のさらなる発展につながることを大いに期待している、と述べた。
臼田孝氏:産業技術総合研究所計量標準総合センター長

現代社会はテクノロジーによる恩恵を享受する半面、様々なリスクに直面している。人類はそのようなリスクを教訓として共有し、その際、科学的なエビデンスに基づく開かれた議論は欠かせない。F-REIは、正に世界の英知を結集し、創造的復興を目指し設立されたものと理解している。AISTでは様々な「はかる」基準に取り組んでいる。計測結果の信頼性、同等性の向上には、国際的な標準化とそのための合意形成が欠かせない。本シンポジウムが放射線計測への正しい理解につながり、福島復興に貢献することを願っている、と述べた。
山崎光悦氏:福島国際研究教育機構理事長

地域の自治体、ICRUの方々、AISTの方々とともにかかる形で国際シンポジウムを開催できることは福島国際研究教育機構(F-REI)にとり名誉なことであると述べたうえで、動画を上映しつつF-REIの事業を紹介した。事業の例として、ロボット開発を通じてF-REIが福島第一原子力発電所の廃炉に資すること、除染を進めながら新しい農業を福島の浜通りから日本中に広げていくこと、放射線の負の面だけではなく放射線科学の医療・産業応用に取り組むこと、原発事故後のデータをアーカイブ化して世界に発信していくことなどを挙げた。
2. 招待講演前半

招待講演前半のセッションは、AIST計量標準総合センターの佐藤泰主任研究員が司会を務めた。このセッションは東日本大震災と原子力発電所事故からの復興を目指してなされた放射線に関わる研究や活動について、日本原子力研究開発機構 深堀智生 副所長、福島県立医科大学 山下俊一 副学長、東北大学 吉田浩子 研究教授が講演を行った。
それぞれの講演概要は以下のとおり。
深堀智生氏:日本原子力研究開発機構 福島研究開発部門福島研究開発拠点 所長
「JAEA R&D Efforts for Decommissioning of the Fukushima Daiichi NPS」

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、福島の事故の当初から研究開発支援を行っている。環境回復の分野での支援もしているが、本講演では廃炉関連の研究開発について報告した。
事故当時、福島第一原子力発電所の原子炉がまず安全にシャットダウンされた。しかし、電源が喪失し、冷却機能が喪失し、その結果、国際原子力事象評価尺度(INES)レベル7の原子力事故となった。現在、1号機と2号機では使用済燃料プールにまだ燃料が残っている。そして、1号機~3号機にある燃料デブリを取り出すという問題が一番難しい。
JAEAには7つの活動拠点が福島にあり、そのなかで、➀ 放射線の測定及び可視化技術、➁ リスクアセスメント、➂ 先端放射線源評価技術について紹介した。
- ➀ 放射線の測定及び可視化技術
- 統合型放射線イメージングシステム「iRIS」
光学情報を測定する3Dレーザースキャナー、ガンマ線の測定を行うコンプトンカメラ、放射線サーベイメーターの3つの測定が統合されている。このシステムにより、見えない放射線をマッピングすることでホットスポットがどこであるか検知できる。 - アルファ線放出核種の計測
燃料デブリに由来する放射性物質を吸引したことによる内部被ばくは、アルファ線放出核種の寄与が大きい。リアルタイム高解像度でアルファ線放出核種の可視化を行い、発生するアルファ線放出核種の粉塵を計測し、連続的にエアロゾルの流れを検出する。 - 光ファイバーレーザー誘起ブレイクダウン分光法
レーザー誘起ブレイクダウン分光法と光ファイバーを組み合わせて、離れた地点で使えるようにする。燃料デブリのある高線量の場所での分析が可能になる。
- 統合型放射線イメージングシステム「iRIS」
- ➁ リスクアセスメント
1号機から4号機について、これまでに得られた測定値を用いて、原子炉建屋の中がどのようになっているかをシミュレーションする。放射線の影響が分かり実際の廃炉の準備や設計に役立つ。 - ➂ 先端放射線源評価技術
デジタルテクノロジーで、コンピューター上で福島第一原子力発電所のデジタルツインを作りたい。
これにより原子炉建屋の中を推定し、廃炉の設計に役立てる。
山下俊一氏:福島県立医科大学副学長
「Lessons Learned from Fukushima Nuclear Power Plant Accident:Limitation of Public Health Emergency Response and Recovery」

福島第一原子力発電所の事故発生からすぐに、福島県で市民とのコミュニケーションをとるなど、様々な活動を行ってきた。しかし、危機時のリスクコミュニケーションには大きな困難があった。その理由として、市民や避難された方々は、放射線関連のリスクや規制について知識を十分にもっていらっしゃらなかったこと、当初は空間線量率や放射性物質の放出などについて科学的で正確な情報が不足していたことなどが挙げられた。
そして、甲状腺がんを中心として福島で学んだことについて報告した。
福島県では、福島第一原子力発電所事故後すぐに子供の甲状腺がんが心配された。これはチェルノブイリ原子力発電所事故後に子供の甲状腺がんが増加したことが理由である。このような健康に対する不安を克服するために、2011年6月から長期的な健康状態をモニタリングするために福島の県民健康管理調査を始めた。その中で、福島県で子供の甲状腺がんの集団検査を行った当初、甲状腺がんが見つかり、そのデータが独り歩きをして、混乱や不安が増大した。しかし、チェルノブイリと比べて被ばく線量が極端に低いこと、年と共に甲状腺がんの件数が減っていることから、過剰診断の関与が示唆される。ただ、混乱や不安を駆り立てたことに変わりはなく、このような経験から次のことを学んだ。
- 放射線に起因する健康被害のリスクはあるが、福島県の健康被害を考えると、避難などによる2次的影響が大きい。更に小児および思春期の甲状腺がんの高い発見率が第二のチェルノブイリへの恐怖と不安によって放射線恐怖症を悪化させた。
- 医学の専門家だけでなく、放射線防護委員や行政官も、福島県で甲状腺がんが多発している現状を、スクリーニング効果として正しく説明する努力を有し、放射線に直接関連したがんの発生として説明しないことが重要である。
- 原子力発電所事故後の復興期において、市民との健全な放射線リスクの共学と対話が課題となっている。
吉田浩子氏:東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープ研究センター研究教授
「Evaluation of Dose Reduction Factors for Wooden Houses in the Affected Areas Based on in situ Measurements」

被災地や住民の方々の最も高い懸念は、自身や家族がどのくらい被ばくしているか、ということである。
外部被ばく線量を推定する方法として、個人線量計と空間線量率を使う2つの方法がある。個人線量計は大変有用だが、事前に外部被ばくを推定することが出来ないことと、個人の被ばく線量を用いて他の人の被ばく線量を推定することができないことのため、外部被ばく線量を推定する方法として用いることができない。そこで空間線量率を用いて、住民の被ばく線量を推定する方法を用いる。このときに屋内の空間線量率が屋外の空間線量率と異なるため、屋内の空間線量率を推定する必要がある。この推定する方法として、屋外の空間線量率に低減係数(RF)をかけ合わせる方法を用いる。
低減係数の定義は、「屋内の空間線量率÷屋外の空間線量率」である。東日本大震災の2011年当時、日本の家屋に対する低減係数は存在しなかったため、日本政府は国際原子力機関(IAEA)から報告されている値を用いた。IAEAでは、木造で1階建てと2階建てで地下室がない場合、代表値として低減係数0.4を報告している。この値はアメリカとヨーロッパでの測定結果のため、日本にそのまま適用できるか確認が必要である。
そこで、福島県で木造家屋の低減係数を評価した。測定結果から、日本の木造家屋の代表値として低減係数は0.4が適切であることを確認した。他の研究者が福島県内で低減係数を測定した結果も同様であった。
一方で、低減係数の測定データを分析すると、低減係数の約10%が0.7~1.4と高く分布している。これには2つの理由があった。1つはセメント瓦に放射性物質が吸着し、そこから放出される放射線が屋内線量の7割に達していた。2つ目は、山や崖の近くでは、汚染された土壌の影響を受けるため、低減係数が増加した。
上記の測定は除染前のデータであるが、年月が経過したり、除染がなされると状況に変化が生じた。除染などにより空間線量率0.5μSv/h 程度まで下がると低減係数が急速に増加することが分かった。
そのため、除染後は、低減係数として0.4と異なる値を用いる必要がある。
3. 招待講演後半
招待講演後半のセッションは、Vincent Grégoire ICRU委員長が司会を務めた。このセッションは放射線防護に関して、ICRU委員であるDr. Thomas Otto とDr. François Bochud およびAIST計量標準総合センター 黒澤忠弘氏が講演を行った。それらの講演に引き続き総合討論がなされた。
それぞれの講演概要は以下のとおり。
Dr. Thomas Otto:Project Safety Officer for High-Luminosity LHC,CERN
「ICRU Report 95 Operational Quantities for Environmental Measur ements」

ICRPは防護量という放射線による被ばくに関する単位を定義している。臓器線量、組織加重係数を使って全身の被ばく線量である実効線量を評価している。実効線量を用いて、個人の線量限度を規定しており、最も重要な防護量といえる。防護量の計算は人体形状ファントムを使って計算されている。
ただ、この防護量に基づいて人体の被ばく線量を測定できない。そこでICRUはICRPと共に、実用量というものを定義している。ICRUレポート39では、実用量は等価線量で定義されている。そこでは、ICRU組織等価物質を使って計算されている。
ここで問題となっているのは、防護量と実用量の定義が異なっているため、それぞれの数値が違ってくる点である。そこで、将来的に実用量としては、換算係数とフルエンスなどの物理量との掛け算にし、換算係数は防護量に基づく新しい定義をICRUレポート95で提案した。たとえば、周辺線量については、従来の定義では整列・拡張場でICRU球の深さ10㎜の地点で吸収された線量に線質係数を掛けたものを使っていたが、新しい周辺線量はICRPレポート116の最大線量と定義した。
新しい定義による影響は次のとおりである。
- カットオフエネルギーが50keV以上の光子周辺線量計はほぼ影響を受けないため、感度を再校正すればよい。
- 低エネルギー光子用の周辺線量計は、5倍ほど過大評価しているので、フィルタの再設計やアルゴリズムの変更が必要。
- 分光ベースの周辺線量計は応答特性を再評価。
- 中性子レムカウンターは引き続き「良い推定値」を与えるため、再校正すればよい。
この新しい実用量を導入する時期は、2030年から2040年ぐらいの間と想定される。新しく勧告された実用量に対応するために、経過措置の期間があると思われ、さらに時間がかかる。
したがって、新しい実用量を反映する線量計を開発するのに十分な時間がある。
黒澤忠弘氏:産業技術総合研究所 計量標準総合センター分析計測標準研究部門 放射線標準研究グループ付
「Establishment of Low Dose Rate Calibration Methods for Environ mental Monitoring」

低線量率の環境モニタリング機器の校正について報告した。
福島第一原子力発電所事故が日本で起きた後、除染、そしてモニタリングのために、線量率1.0μSv/h未満という低線量率の校正に品質保証が必要となった。
そこで、低線量率の校正に2つの手法を開発した。1つがコンパクトな低線量率照射システムであり、可搬型サーベイメーターの校正のために用いる。もう1つが固定式の環境モニタリングポスト向けに開発された現地校正用の照射システムである。
- コンパクトな低線量率照射システム
遮蔽用の箱がバックグラウンド線量率を減らすために設計されている。こうすることで低線量率でも安定した校正が行えるようになる。外側は厚さ30㎜の鉛のシールドでカバーされ、内側は厚さ2㎜のステンレス板と厚さ1㎜のアルミ板を用いている。この内側の金属が、鉛から発生する特性X線を遮蔽するのに役立っている。この遮蔽効果により、箱の内部のバックグラウンド線量率は0.01μSv/hよりも低くなった。校正の標準不確かさはH*(10)については2%程度である。 - 現地校正用の照射システム
環境放射線測定機器のほとんどが野外に設置されている。これらは大型で重いため、校正を行うために校正室まで運ぶことが難しい。そこで、現地校正用の照射システムを開発した。この照射システムは、モニタリングポストの上方から、ガンマ線源をコリメートしてガンマ線を照射し、校正を行う。このコリメートは散乱光子を減らすのに非常に役立ち、校正の標準不確かさは2.9%となった。試験校正時のバックグラウンド線量率は、2.8μSv/hあるいは3.7μSv/hであったが、問題なく校正可能である。線量計を遮蔽することでバックグラウンド線量率をほぼ半減させ、校正することも可能である。
Dr. François Bochud:Director, Institute of Radiation Physics at Lausanne University Hospital
「Individual Dose Assessment: the Example of Acute Exposure」

原子力発電所の事故や放射性物質が飛散した場合などで、人が急性被ばくした時に、個々の人が被ばくした線量を評価したい場面がある。それらの緊急時に個人が被ばくした線量の評価手法を紹介する。
急性被ばくの場合に使われる単位は吸収線量である。吸収線量を評価するために通常は線量計を使うが、急性被ばくを評価する場合には必ずしも線量計は必要でない。ICRUレポート94に生物学的な手法、および補完的な手法による吸収線量の評価手法を報告している。
- 生物学的な手法
生物学的な評価方法は3種類あり、血液、リンパ球、血清、尿などを用いる。- ➀ Dicentric chromosome(二動原体染色体):
50年前に開発された手法であるがもっともよく用いられる。結果が出るまでに2,3日必要である。 - ➁ Translocation(転座):
転座の数を染色体の蛍光よって観測し、どのくらい線量を受けたかということを評価する。 - ➂ γ-H2AX:
放射線などによってDNA損傷が誘発された細胞をγ-H2AXに特異的な蛍光抗体を用いて可視化する。γ-H2AXが線量と比例し、感度は高い。しかし、減衰が早いため、被ばく後にすぐに測定しなければいけない。
- ➀ Dicentric chromosome(二動原体染色体):
- 物理的な手法
物理的な評価手法は3種類、EPR(電子スピン共鳴)法、TL(熱ルミネッセンス)法、そしてOSL(光刺激ルミネッセンス)法がある。分析対象物として、歯、骨、個人の身に着けていたガラス、砂糖、繊維などを用いる。- EPR法:
放射線が吸収されたときに発生するフリーラジカルを測定する。EPRでは歯や骨に含まれるエナメル質がもっとも有効である。それ以外のサンプルも活用することができる。 - TL法、OSL法:
結晶などが放射線を吸収するとその中の電子が励起され、トラップされる現象がある。そのトラップの数を光もしくは赤外線の蛍光によって測定でき、吸収した線量を評価できる。これらの現象は光に敏感なため、光から保護されている必要がある。例えばスマホのSIMカードなどは測定が可能である。
- EPR法:
- 補完的な手法
補完的な評価手法として、バイオアッセイ法と中性子放射化分析法がある。- バイオアッセイ法:
体から放出されるガンマ線を測定する対外計測法(ホールボディカウンター、甲状腺モニターなど)と、排泄物や尿に含まれる放射性物質の量を測定する方法がある。 - 中性子放射化分析法:
中性子を受けた場合、血液中の放射化したナトリウムを測定することによって、被ばく線量を推定する。
- バイオアッセイ法:
総合討論
Vincent Grégoire ICRU委員長の司会により、質疑応答の形式による総合討論が行われた。
総合討論の概要は以下のとおり。
- 個人被ばく線量の推定・評価:
線量のリスクなどをどのように伝えるのかが重要である。
皆さんに信頼される関係がもっとも重要である。 - 被ばく線量の個別化:
さらに検討が必要である。個別化には精密な線量計測を使うべきである。
しかし、例えばレントゲン撮影など個別線量を測定すべきでないものがあることに注意すべき。 - 人の放射線感度の個人差:
2つの意見があった。1つは、遺伝的な症候群など極端な場合を除いては、重要な影響があるかどうか分からない。他方は、リスクと線量との関係には個人差、個体差があり、体格、男女、年齢の3つのパラメータは勘案する必要がある。 - 福島事故時の避難決定:
当時の避難の決定は合理的であったが、いくつかの問題があった。避難指示が、県単位や広い地域単位であったため、県や地域によって違いがあった。一方で汚染は地域単位内でも大きく異なっていた。子供の健康調査や防護策についても、こぼれ落ちる人がいる。避難指定区域でのカテゴリー分けで補償金も違ってくる。多くの影響があり全体を評価するのは難しい。 - 線量率と人体への影響:
急性的なものと慢性的なものとの違いと思うが、データを持っていない。線量率の違いによる影響は同じではないが、実際にどのような違いがあるのかを把握するのは難しい。放射線治療では、がん治療と骨髄移植で使う線量率が違うが、骨髄移植での低線量率では通常の組織に対する影響が低い。 - 甲状腺がん:
潜伏期間は、子供は数年と短いが、成人は10年、20年と長い。福島県で甲状腺がんの集団検査は行ったが、この比較対照として汚染されていない地域での集団検査は行っていない。韓国で20年前に集団検査を行ったがそれは成人であり、子供に対して集団検査を行ったのは今回が初めてだった。
4. おわりに
本シンポジウムはICRU年次会合を日本に招致し、それに付随して開催された。
ICRU日本招致全体スケジュールは表2のとおり。
表2 ICRU日本招致全体スケジュール
| 日程 | 時間帯 | 活動内容 |
|---|---|---|
| 4月16日(日) | 午前 午後 夜 |
ICRU役員会議 ICRU年次会合 レセプション |
| 4月17日(月) | ICRU年次会合 | |
| 4月18日(火) | ICRU年次会合 | |
| 4月19日(水) | 午前 午後 夜 |
ICRU年次会合 ICRU国際シンポジウム ICRUディナー |
| 4月20日(木) | 午前 午後 |
福島第一原子力発電所視察 東日本大震災・原子力災害伝承館視察 |
| 4月21日(金) | 午前 | 量子科学技術研究開発機構視察 |
本シンポジウム開催にあたり、復興庁、経済産業省、協賛機関をはじめ、多くの機関の方々にご協力を頂きました。ここに感謝申し上げます。