放射性物質の動き-森林Radioactivity Dynamics in forests
(2025年)
Qきのこ原木用広葉樹に含まれる放射性セシウムの濃度を効率的に調べる方法はありますか。
A森林総合研究所などの研究によれば、きのこ原木に含まれる放射性セシウムのばらつきは、同じ調査区(およそ20〜40 m四方)内ではほぼ一定と見なせます。そのため、調査区ごとに当年枝を5個体採取して平均を取れば、濃度の分布を実用的な精度(23倍程度の範囲)で推定できることが分かりました。
福島第一原発事故で飛んだ放射性セシウム(主に半減期30年のセシウム137)は、きのこ原木の利用判断に関わる重要な因子です。原木の出荷の目安として乾重量で50 Bq/kgという指標が使われていますが、林分内で濃度がどのようにばらつくかが十分に分かっておらず、適切なサンプリング数が不明でした。
写真1 福島県田村市のきのこ原木林(2014年5月)
森林総合研究所などの研究チームは、きのこ原木林から採取した418検体の当年枝の放射性セシウム濃度データを用い、統計モデルで各調査区内の個体間ばらつき(予測分布と95%予測区間)を解析しました。
解析の結果、どの調査区でも95%予測区間の上限と下限の比がおよそ23倍程度に収まると予測され、調査区内のばらつき幅を共通に扱ってよい(ほぼ一定とみなしてよい)ことが示されました。
また、当年枝の放射性セシウム濃度の測定値がない場合の予測区間は非常に広くなりますが(最大で約386倍に達する推定)(図1(a))、実際に当年枝を測って個体数を増やすと推定のばらつきは小さくなります。(図1(b)および(c))これらを踏まえて、既往の事例などと照らし合わせた結果、調査区ごとに5個体採取して平均を取れば、濃度の分布を実用的な精度で推定できると判断されました。
図1.当年枝の放射性セシウム濃度の予測の例
(a) 当年枝の放射性セシウム濃度の測定値がまだないときの予測値の分布(青線)と95%予測区間(青色の領域)。ヒストグラムは418検体の測定値の分布。
(b) 濃度が小さい場合に5個体から測定値を得たと想定してシミュレートしたときの測定値(赤丸)と、今回推定された濃度のばらつきの情報を加えて推定した予測値の分布(赤線)および95%予測区間(赤色の領域)。
(c) (b)と同様に、濃度が大きい場合を想定してシミュレートした例。
原木林が利用再開できるかどうかは、放射性セシウム濃度の調査の結果次第となります。そのため、森林所有者やきのこ原木生産者の方にとって、特定の原木林が将来利用可能かどうかは重要な情報となります。
今回明らかにした、調査区内での放射性セシウム濃度の予測区間の最大値・最小値の比を一定と見なせるという知見は、原木の出荷が可能な林分の特定に直結するものではありませんが、将来的な調査手法の効率化や原木の放射性セシウム濃度予測手法の確立に欠かせない重要な知見といえます。
Q 福島県内の森林の落ち葉には、放射性セシウムがどの程度含まれているのですか。
#3 放射性物質の動き-森林