放射性物質の動き-河川水系Radioactivity Dynamics in River System
(2025年)
Q沿岸の海底表層にある堆積物に含まれる放射性セシウム(137Cs)は、なぜ場所や時期で濃度が異なるのですか。
A海底近くの「水の動きの強さ」と「堆積物の粒の大きさの違い」が主な原因です。荒い波や強い潮流がある場所では均一に混ざりやすく、穏やかな場所では嵐などのときだけかき混ぜられて粒の分別が起きるため、濃度が場所や時期でばらつきます。
福島第一原子力発電所事故後のモニタリングにより、海底表層堆積物の137Cs濃度は時間とともに低下してきました。しかし、沿岸域(水深30 mより浅い場所)では、低下が遅い地点や濃度のばらつきが大きい地点が存在しています。沿岸域は漁業やレクリエーションと密接に関わる場所であり、濃度変動の要因を明らかにすることは地域住民の安心にもつながります。
日本原子力研究開発機構の研究チームは、福島第一原子力発電所近くの浅い外浜(波が強くかき混ぜられる場所)と、やや深い沖浜(普段は穏やかでときどき嵐などでかき混ぜられる場所)について、2019〜2021年に堆積物の柱状試料を採取して調査しました。
堆積物の上下方向(鉛直)の137Cs濃度分布と粒径(砂・シルト・粘土など)を調べ、海底付近の海況(波や潮汐・暴風時に起きる海底の乱れなど)と照らし合わせて分析しました。
調査・分析の結果
外浜では、波や潮汐の力で海底の表層から深さ数十cmまでよくかき混ぜられ、砂質層に137Csが比較的均一に分布し、濃度変化はほとんど見られませんでした。
一方、沖浜は普段は穏やかで、強い嵐のときだけかき混ぜられます。嵐のときに細かい粒子が遠くへ運ばれ、粗い粒が残る――という粒子の分別が起きるため、採取する時期や場所によって137Cs濃度が大きく変わると考えられます。
これらの結果から、堆積物の性質や海況の違いが沿岸域における137Cs濃度の変動に影響を与えていると考えられます。
図.沿岸域海底付近の137Cs動態の模式図
外浜(波や潮の力が強くていつも混ざっている場所):137Csは均一になりやすく、ゆっくり減る。
沖浜(普段は穏やかでときどきかき混ぜられる場所):嵐のたびに砂や泥が選別され、137Csの濃さが時間や深さでばらつく。
参考文献
Q 河川から流入する放射性セシウムは、沿岸環境にどの程度の影響を与えますか。
#4 放射性物質の動き―河川水系